日本語仙人の難しい日本語

漢字の読み書き、常套句、ことわざや格言、間違えやすい言葉―。中・上級レベルの日本語を紹介。

中国の四大美人と四字熟語

おはようございます。

日を跨いでしまいましたが、元気に更新して参ります。

 

皆さんは、世界三大美女というのを聞いたことがあるでしょうか。

一人目に、クレオパトラ7世(エジプト、プトレマイオス朝[前69~前30])

二人目に、楊貴妃(中国、[719~756])

そして、三人目に小野小町(日本[不詳 9世紀頃])

と、ご存じの方も多いと思います。

 

しかし、実は小野小町は日本のなかで言われているだけであって、クレオパトラ、楊貴妃、ヘレネ(ギリシャ神話の女神)を世界三大美女とする見方が多いようです。

また、ヘレネは実在する人間ではないとのことから、ヘレネに替わって(もしくは加えて)、マリー・アントワネット(フランス[1755~1793])を世界三大美女(四大美女)の一人とする説もあります。

 

そもそも、「世界三大美女」という括りも、誰かが勝手に言い出したものだったり、国によって区区(まちまち)なので、教養(?)というレベルには達していないのかもしれません。

 

それでは、中国ではどうなのかというと、中国四大美人といわれる人たちがいます。

沈魚落雁(ちんぎょらくがん)羞花閉月(しゅうかへいげつ)は、絶世の美人を表す四字熟語なのですが、それぞれにモデルとなった人物が居るのです。

 

沈魚美人

西施(せいし)。生没年不詳、春秋時代(前5世紀頃)。

呉王の夫差(ふさ)は、西施の美しさにうつつを抜かすあまり、国政をおろそかにしてしまい、やがて呉は滅亡してしまう。

川で洗濯をする姿が美しく、それに見惚れた魚たちは泳ぐのを忘れてしまったといわれている。

大きな足が欠点だった。

 

落雁美人

王昭君(おうしょうくん)。生没年不詳、前漢の時代(前1世紀頃)。

漢の、匈奴(きょうど)に対する和睦政策で、異国に嫁ぐことになった。

旅の途中、祖国への思いを込めて弦楽器をかき鳴らしたところ、その哀愁と美しさに魅入った雁が次々と地面に落ちてきたという。

撫で肩なのが欠点だった。

 

羞花美人

楊貴妃(ようきひ)。上述。

容貌美しく多くの芸に秀でる。玄宗皇帝の寵愛を受け、皇后と同等の扱いを受けることになった。安史の乱により、亡命途中に避難地で自殺。

彼女が後宮を散歩すると、庭の花々が彼女の美貌と芳香に気後れし、一斉にしぼんでしまったといわれる。

腋臭(わきが)だった。

 

閉月美人

貂蝉(ちょうせん)。後漢の時代(2世紀後半頃)。

『三国志演義』で有名。架空の人物。

呂布董卓の仲をその美貌でもって撹乱させる。結果的に董卓が殺害されることになる。

天下を憂いて物思いに耽る彼女の姿はあまりに美しく、月が恥じて姿を隠してしまったという。

耳が小さいのが欠点だった。

 

中国四大美人と称される彼女たちにも、一つ欠点があったと描かれているところが興味深いですね。

一方で小野小町は、容姿端麗頭脳明晰で、男にモテていたにもかかわらず、それになびかないという貞操観念を持ち、まさに非の打ち所がない(=穴の無い)女性と言われていました。すなわち、体に欠陥を持っているのではないかと噂されていました。(※後に一子を授かったと伝えられています。ひどい噂です。)

 

絶世の美女と呼ばれる人でさえ、何かしらの欠点はあります。というか、「美人」だの「欠点」だの、単なる個性です。二元論的考えは苦しさのもとです。

ついつい他人と比べてしまうのが我々人間の性(さが)ですが、他人の粗さがしをせず、自分を卑下することもなく。自分に与えられたものだけを誇りに、生きていきましょう。それでは!!!